皆さんこんにちは!
災害医療大学:医療防災学科です!
いきなり病院におけるBCP〈業務継続計画〉の策定は難しいので、
まずは既存のマニュアルに手を加えてみましょう!
ということをご紹介しました!
今回は、作成したマニュアルを点検するときに何に注意して、どんなことを見直せばよいのか?を紹介します!
そもそもマニュアルになってるのかな?
マニュアルとして必要なことは書いたかな?
などの確認にもご活用ください!
1.地域の中での位置づけ
災害が起きた時に目を向けるのは病院だけではありません。
地域の中で病院に何が求められているのかを確認します。
地域防災計画や、防災業務計画で地域や組織における病院の位置づけを明確にしましょう。
2.組織・体制
災害対応は普段の業務からすると全く別の仕事になります。
つまり、「災害対応係」みたいな形で委員会が必要になります。
明文化しないと「何したらいいかわからんけど俺災害対応委員会なんよね~」といった形になってしまいます。
次に、お金です。
災害対策では備蓄するもの、これから備えて行動すること、何かしらお金がかかってきます。
災害対応委員会に予算を決める権限を与えるなど、適切な措置が必要です。
3.災害対策本部
災害対応の際に最もはやくに行うのは「指揮命令系統の確立」です。
大規模災害時のマネジメントの中でも触れているのでこちらもご覧ください!
指揮命令系統として各病院で設置すべきは「災害対策本部」です。
発災してからそこらへんにいるメンバーで災害対策本部にしました!!
では遅すぎます。
本部長や要員を決めたとしても、発災したタイミングで不在のことも考えられます。
当然連絡がないことも考えられます。
必ず本部長の代理を務めることのできる人を決めましょう。
災害対策本部は今後病院と外部の情報を集約し、指示を出す場所となります。
内部・外部との連絡手段は必須です。
「災害優先電話」の導入も検討してみましょう!
急に「EMIS」って出てきたけどナニコレ??という方はこちらをご覧ください。
EMISは簡単に説明すると病院の安否確認システムです!
4.診療継続・避難の判断
病院の状況によっては外来診療や手術の中止、病院避難等の判断が必要になります。
災害本部長が判断を下すことになるのですが、判断の基準と対応が事前に決まっており、職員に周知されていれば素早い対応が可能になります。
5.安全・減災措置
病院は災害が起きた時に災害医療を提供する拠点として病院内の職員や患者の安全確保が必須です。
事前に耐震安全性評価を行うことをご存じの方は多いと思いますが、
「災害発生後でもその建物は安全なのか?」を判断する被災建築物応急危険度判定も必要です。
判定師の派遣をどこに頼むのか?なども検討しましょう。
6.本部への被害状況の報告
ここでいう本部は災害対策本部です。
災害が発生してからの被害状況の把握、活動方針の判断は速やかに行う必要があります。
いかに情報を集めるのか?
報告は誰がどのように行うのか?などの報告書式・手順を統一しましょう。
7.ライフライン
病院の機能を維持するにあたってライフラインは必須です。
供給されない場合に備えて、緊急手配できるような計画、復旧の手順を検討しましょう。
足りない物品は購入・契約が必要です。
また別の記事で紹介する予定です。
医薬品・医療材料の備蓄は3日分と言われていますが、現在では7日分必要とも言われています。
高知県立大学で出された論文によると少なくとも3日分の備蓄では足りません!
8.緊急地震速報
緊急地震速報は揺れの到着時間や震度を可能な限り早く知らせる装置のことです。
緊急地震速報を導入するだけでなく、館内放送、エレベーターと連動させることで、患者や職員の安全を確保できます。
9.人員
発災時に職員の安全確認、参集の流れを決めておくことでスムーズに災害対応に移ることができます。
また、参集した職員の食糧・水・休憩・仮眠スペースはあらかじめ確保しておきましょう。
職員参集に対して一番反対するのは職員の家族です。
「こんな時にも仕事なの!?」となってしまわないようにあらかじめ伝えておく必要性があります。
10.診療
災害時の診療にはトリアージがつきものです。
トリアージとは傷病者の重症度を評価し、緊急度順に診療を行うものです。
特にどこでトリアージを行い、どこで待機してもらうのか?
などのレイアウトの際には人の流れ〈動線〉を考える必要があります。
各エリアの担当者や診療の手順もマニュアル化し職員に周知されている必要があります。
11.電子カルテ
電子カルテシステムや画像システムなどは災害時に使用できない可能性が考えられます。
停電時の対応や、サーバーの転倒防止などを検討する必要があります。
また、システムダウンした際の代替方法やデータのバックアップも検討しましょう。
12.マスコミ対応・広報
マスコミ等については病院本来の機能維持には関係のない部分ではありますが、個人情報の保護等の観点からも検討しておいたほうがよいでしょう。
また、マスコミをうまく使うことができれば支援物資等の供給が期待できるかもしれません。
取材時に話してよい部分、そうでない部分の線引き等を共有しておきましょう。
13.受援計画
DMATやJMATのような医療救護班や、医療ボランティアが被災地に駆けつけるようになっています。
医療チームや医療ボランティアが来たらどのように活用するのか?を決めておくことでより効率的に活動することができます。
14.災害訓練
災害対策のマニュアルを作ったところで、災害時にそれを知っている人がいなければ意味がありません。
訓練をして、シミュレーションしていないと動けません。
多数傷病者の受け入れ訓練だけでなく、災害対策本部を立ち上げ、外部との連絡までのシミュレーション、亜急性期や慢性期までを見越した机上訓練を行いましょう。
マニュアルとしては年に何回どのような訓練を行うのか?を記載しましょう。
訓練が行事化してしまうと意味がありません。
毎回内容を変える、参加者には内容を伏せて行うなどの対策も必要です。
15.災害対応マニュアル
組織的な災害対応のためにこのマニュアルを作成しています。
また、一回作ったら終わりではなく、「訓練→評価→見直し→訓練」のようにPDCAサイクルを回す必要があります。
誰が訓練を執り行うのか、評価するのか、要はマニュアルを誰が管理するのか?を明確にしましょう。
災害は1ヵ月で終わるとは限りません。
発災から通常の診療ができるようになるまでをマニュアルで網羅できるようにしましょう。
災害関係のマニュアルはいくつありますか?
火災時の防災マニュアル、地域として作っている地域防災計画等、いくつかあります。
それぞれのマニュアルについて整合性が取れている必要があります。
以上でマニュアルのチェックポイント87個は終わりです。
この87個が全部できていればマニュアルは完成ですね!
※完成したというのは、定期的な見直しができている状態で完成ですよ!
足りないところなどは随時購入や手配の計画を立てましょう。
発災してから足りないことに気が付いても遅いのです。
事前の準備は今これを読んでいるあなたから始めましょう!
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